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【第1章】
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 それはある一言から始まった。

「幽霊ビルって知ってるか?」

 よくある話だ。建設途中のビルがそのまま放置されて、そこに幽霊が棲み付いた。そんな噂が立つのは、ある意味では自然と言えよう。本当にいるかは別問題として、だ。
「知らん」
 俺は無視してすたすたと歩き出した。そういうものに関わっても往々にして悪いことしか起こらないことは分かり切っている。
「待て待て待て。そんな瞬間で足蹴にするこたぁねぇだろうよ」
「知らんもんは知らん。俺は忙しいんだ」
 正直、言うほど忙しいわけではない。ただ逃げるためだけの在り来りすぎる口実だ。
 教室を目指して少しスピードを上げる。階段を上って曲がってすぐ…よし。
「お前の考えは大抵分かる。何せ俺とお前は血を分けた兄弟だしな」
 意味合いとして若干違う気がするがあまり気にしない。とりあえず逃げ切ることだけを考える。
「じゃあ尚更だ。分かってるなら他を当たってくれ」
 もうすぐで教室。逃げ切れそうだった、ということで若干スピードを落とした。すると。
「行って帰って来れたら十万やるって言ってる奴がいんだよ」
 十万、という言葉に一瞬だけ足が止まる。こういうときこそちゃんと言っといた方がよさそうなので、俺は振り返った。
「お前な。兄弟として忠告しとくけど、行って帰ってくるだけで十万って絶対ヤバいぞ。危険極まりない」
 せっかく警告してやったのに、奴は飄々とした態度で(しかも右手の親指を立てて)こう言い放った。
「Time is money!!」
「……やっぱり行って来い。そして死ね」
 そして、踵を返してまた階段を上がろうとしたが、いつの間にか先回りされていた。やはりそのあたりの考えは読まれている。
「おーいー!いつものお前なら『何でそこで英語だ』ぐらいの突っ込みは入れるだろうよー?」
「ウザい」
 そして、奴を避けてまた歩き出した。さっきの場所で燃え尽きている。流石に連続で突き落とすとあんなバカにも効果があるみたいだ。覚えとこう。
「俺の一言一言の殺傷能力を甘く見てもらっては困るな」
 その言葉を言い残し(今度こそ)俺は去って行った。
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