今日の天気は雨。 夕方からはさらに天気は崩れ雷が鳴り、ひどい大雨になるらしい。 『…と、さっきテレビで言っていましたが、私の予想では午後から天気は崩れてくると思います』 「え!?、本当なのミー君」 『はい、間違いありません』 男性にしては少し高く凛とした声がそう言うと、ギナは朝食で使った食器を洗う手を止め、困ったように顔を顰めた。 「ミー君の天気予報はよく当たるから…どうしよう、お昼から買い物行こうと思ってたのに…」 『なら、今日はお出かけなさらず部屋でのんびりとしたらどうです?』 「でも、材料買ってこないと夜ご飯作れないし…」 『ルームサービスを頼むか、最上階にあるレストランでお召し上がりになればよろしいじゃないですか』 「うん…。…でも、兄さんと一緒にいる時は僕がご飯作ってあげたいんだ」 そう言って、ギナは壁に掛かっている時計に目をやる。 時刻は、10時5分。 午後まで、まだ少し時間がある。 「…なら、今行ってくるよ」 洗いかけだった食器を手早く洗い食器乾燥機に入れると、ギナは着けていた黒いエプロンを外した。 『でも、雨が降っています。もし、お風邪でも引かれたら…』 「大丈夫だよ。雨がひどくなってきたらすぐ帰って来るから」 『ですが…!』 「ね、お願い!ミー君!」 そう言ってギナはぽん、と両手を合わせ頭を下げる。 主の弟で、自分にとっては主と同じくらい大切な人に頭を下げられては、こちらに勝ち目はない。 彼は深く溜息をつくと、手を合わせ頭を下げているギナを見下ろした。 『分かりました。…ですが、本当に雨がひどくなる前にお戻り下さいよ?』 刹那、顔を上げたギナの顔がぱぁ、と明るくなる。 「うん、約束する。ありがとミー君!」 そう言ってほにゃりと嬉しそうに笑うギナに、ミー君―――――ミクリのミロカロスも釣られてふわりと微笑んだ。 ギナが普通の人と違う所。 1つは、顔と体にある傷。 ――――― そしてもう1つは、ポケモンの言葉が分かる事。 この力はギナが右目を失ったあの事故後、突如として開花した力で、『生きてた事すら奇跡的なのに、更に奇跡が!?』と、医者とポケモン学者の間でちょっとした騒ぎになったらしい。 その後ギナは体のあちこちを検査されたが、その他の体の機能に異常はなく、ハッキリとした原因も分からないまま、事件は以外にあっさりと幕を下ろしたのだった。 「兄さん、ちょっと買い物に行って来るよ」 リビングでテレビを見ているミクリに声をかけ、ギナは机の上に置いてあった財布をパーカーのポケットに入れる。 ちなみに今のギナの服装は黒のタートルネックに深緑のパーカーを這おったラフな服装で、顔の傷は顔の半分が隠れるほど大きなアイパッチに似た布で隠している。 「買物は昼に行くんじゃなかったのかい?」 「そのつもりだったんだけど、ミー君がお昼から雨酷くなるって…」 「ミロカロス、本当なのか?」 そう言ってミクリがミロカロスを見ると、ミロカロスはこくりと頷く。 「だから早く行かないと」 「なら、今日は部屋でのんびりしてればいいじゃないか」 「でも、夜ご飯が…」 「ルームサービスを頼むか、最上階にあるレストランで食べればいいよ」 ミクリがそう言った刹那、その姿が先ほどのミロカロスの姿と被り、それが可笑しくてギナはクスクスと笑った。 「兄さん、ミー君と同じ事言ってる」 そう言って笑うギナの姿に、ミロカロスもクスクスと笑う。 そしてそんな1人と1匹の姿にミクリは、まいったな、と苦笑した。 「大丈夫だよ、雨がひどくなってきたらすぐに帰ってくるからさ。ね?」 そう言って見つめてくるギナに、ミクリは溜息をつき、苦笑した。 ミクリといいミロカロスといい、結局はギナに弱いのだ。 「…分かった。気をつけて行っておいで」 「!、ありがとう兄さん!」 嬉しそうにミクリに笑いかけ、ギナはパタパタと玄関へと向かう。 そしてスニーカーを履くと、ドアノブに手をかけた。 「ギナ」 ふと、後ろから名前を呼ばれ振り返ると、薄い緑の傘を持ったミクリがいた。 「ほら、傘忘れてるよ」 「あ、ごめん。ありがとう、兄さん」 傘を受け取り嬉しそうに笑うギナの姿に、ミクリはまた苦笑する。 「まったく、ギナはこう言う所抜けてるんだから。…傘を置いて行くほど、急いで行くのかい」 「だって、ミー君の天気予報はテレビのより当たるから。…それに、 今日は何か『良い事』がありそうな気がするから」 そう言ってほにゃりと微笑むと、行ってきます、と言ってギナは傘を片手に玄関のドアを開けた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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