図書室

おサカナには要注意!
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【閲覧注意】byそらね蚊乃














「ただいま!」
同室の四ノ宮那月がようやく帰ってきた。俺はヘッドフォンを外した。
「また遅かったな、今日も。」
「ハハハ、お土産もらったよ。」
「お土産?」
那月はビニール袋を持ち上げた。
「秋刀魚(サンマ)だって。月宮センセが焼いてた。まだ熱いよ。」
「秋刀魚?」
「ちょっと変わってるけど、おやつにしようか。」
那月は袋から、ラップに包まれた紙皿を取り出した。湯気の水滴がラップに付着して中は見えないが、秋刀魚の尻尾が2匹分、皿からはみ出している。
「月宮先生、みんなのために焼いてたの?」
「みたい。音也とトキヤも、座りこんで食べてたよ。」
那月はラップをめくると秋刀魚の頭と尻尾を両端で掴み、そのまま噛みついた。
「ん、美味しい!すでに塩味になってる!」
那月はガツガツと秋刀魚にありつく。俺も、那月のように秋刀魚の腹をかじった。
「美味しい!」
確かに、脂がのってふんわりした身にはかすかな塩味がきき、本当に旨かった。さらに一口、もう一口と、俺はどんどん秋刀魚を食べていった。
しかしその瞬間、俺の喉に刺すような痛みが走った。
那月がプッと秋刀魚の骨を吐き出す。
「秋刀魚の骨ってわりと固くて大きいから、気をつけないとね。……って翔ちゃん?どうしたの?」
那月は俺を見てきょとんとした。俺は食べかけの秋刀魚を皿に放り出し、喉をさすりながらゲホゲホと噎(む)せかえっていた。
「翔ちゃん、まさか…。」
「刺さった。」俺はしゃべるのも苦だった。「秋刀魚の骨。」
「手遅れだったか!」那月も秋刀魚を皿に置いた。「大丈夫、痛い?」
那月は俺の喉をさすり、顎をそっと持ち上げた。「ちょっと口、開けてみ。」
俺は口を大きく開け、那月に見せた。必死に唾を飲み込むが、骨はなかなか喉を通ってくれない。
「あわてんぼうなんだから。ゆっくり食べればいいものを…。」
那月はそう言って、棚の中から懐中電灯を出してきた。それで俺の口の中を照らす。
「ああ、なんかもう骨見えてる。見えてるんだけど……掴むには遠い…。」
那月は左手で懐中電灯を持ち、右手を思い切り俺の口の中に突っ込んだ。
「あああ…」
吐きそうになるが、必死に我慢する。那月の指は俺の上顎をつつくばかりで、生憎喉には到達しなかった。
「ちくしょう…どうしようかな…。」
那月の手が俺の口から出ると、俺は肩で大きく息をした。
「そういや、確かここに…。」
那月はまた棚をひっくりかえし、今度はピンセットを取り出した。指で軽く埃をはらい、那月はそれを構えた。
「さ、翔ちゃん、かなり苦しいと思うけど、もっかい口開けて。今度こそ取れると思うから。」
「ご、ごめんな…。」
俺はまた口をあんぐりと開けた。那月は懐中電灯を照らすと、ピンセットを俺の口に深く差し込んだ。
「っ…!!」
喉から唾があがってくる。目からは涙がこぼれる。目を瞑って必死に耐えた。
那月のピンセットが俺の舌の根に当たる。口から唾がつたう。那月はもっと深く、ピンセットを進める。
「……よし、取れた!。」
那月が言った瞬間、大きな骨をつかみあげたピンセットが俺の目に飛び込んできた。しかし、同時に胃の中のものが急激に喉からこみあげてきた。
「……!!!」
こらえきれず、俺は口の中の液体を全て吐き出した。しかし、それは那月の右手が受け止めていた。
「頑張った、頑張った。」
那月に背中をさすられながら、痛みの消えた喉をさすり、俺は大きく息をしていた。












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